第80話『人を伸ばすリーダー』



「自ら率先して行動していた優秀な人材を、リーダーに抜擢したら・・・・チームをまとめられなくて悩んでいるようでどうしたものかと。」

「もう少し状況を詳しく聞かせていただけますか?」

「はい。以前は何でも率先して行動していたので、周囲もその影響を受けてチームが活動的になっていたのですが、自分がリーダーになった途端、強制的になってしまったというか、強引になってしまっているので人がついてこないどころか不平不満が起こっています。」

「例えば、あの人にはついていけないとか?ですか。」

「その通りです・・・」

「以前のリーダーだった方は、どちらに行かれたのですか?」

「他の部署のリーダーになっています。」

「以前のリーダーの方と、新しくリーダーになった方に詳しく話を聞く必要がありますが、根本的には2つの問題が考えられます。」

「ぜひ、教えて頂きたいのですが。」


バリバリやっていた人材がリーダーの立場になると、上手くチームをまとめられないどころか、離職者が増える場合もあるので注意が必要です。

その人が悪いわけでは無く、本人もリーダーとしてどうしたらいいか悩み迷っているかもしれません。


私がお答えした1つ目の問題は、

『リーダーとしての訓練が為されていない』

というものです。

優秀な人材だから当然のごとく優秀なリーダーになるわけではありません。

時間をかければ主体性を持った人材なので本人がいつかは気付くと思いますが、自らの役割を目標に向かってこなしていた立場と、目標に向かってチーム全員の力を引き出して行動につなげていくことは別の学びが必要です。


以前は、自らの行動で好ましい影響を発揮していたようなので、そこはリーダーとして指揮官先頭や率先垂範で継続していく必要があります。

次に、チームのメンバーに対して全体の目的と目標をリーダー自らが説明して、個々の役割を再度明確化して確認する必要があります。

更に、リーダーはメンバーの活動をよく見て、こまめにフィードバックする必要がありますが、この時に注意する点が1つあります。

人を伸ばすリーダーは、良いところを見つけてフィードバックし、課題になっているところを共有してサポートしていきます。もちろん、メンバーが自らの行動で課題を解決していく為のサポートです。


人をダメにするリーダーは、出来ないところをすぐに指摘します。特に、バリバリと自ら率先して行動をしてきた彼の場合は、自分で言われなくても解決していった自負があるので、他人にも同じことを求めます。

本人にとっては、これが自分にとっての勝ちパターンなので、他人にも同じように強制してしまう。


「人はダメな所ばかり指摘されるとどうなっていくと思いますか?」

「う~ん、私だってやる気がどんどん無くなっていきますね。」


「そうなんです。別に甘やかすわけではありません。10点でも点数が取れたらそれを確認して、残りの90点をどうクリアしていくかを話し合うことで、10点の繰り返しをしていく気持ちが生まれます。」
「そうしていく為のリーダーへの訓練と仕組みがありますか?」

「まったくありません」

ということで、1つ目はリーダーとしてやることと、指導の仕方を作ること。


2つ目の問題は、

『リーダーになっている人が、次のリーダーを育成する仕組みが無い』

という点です。


「以前のリーダーの方は、先ほどの話を自然とやっていた可能性があります。本人にどのようにチームをまとめて指導していたのかをヒヤリングしてみる必要がありますが、人が力を発揮することを自然とやれる資質を持った方だと思います。」

「そうですね。今の部署でも、早速チームがまとまって行動的になってきています。」

「先ほどの仕組みを、そのリーダーの方を交えて形にしていくと良いと思います。」

「それから、そのリーダーの方を交えて、次のリーダーを育てるための仕組みを考えることです。」

「どうやればいいのでしょうか?」


人数が多い部署やチームでは、役職としてもリーダーの代わりの存在がいます。

そのような役職が無い場合でも、「いない時は頼むね」と言われる存在の人がいます。

リーダーの右腕を作ることですが、リーダーとしての考え方ややるべきことを一緒に体験してもらい、少しずつその視点を学んでもらうことです。

これも仕組みが必要です。


感覚でやれるリーダーもいますが、感覚でやっていると次のリーダーには受け継がれないものになります。それを見て学んでくれればいいのですが、なかなかそうはいきません。

古典でもリーダーとしての在り方が書かれているくらいなので、リーダーになる前からそれを学んで訓練し、身につけておく必要があります。


私がクライアント様をお手伝いさせて頂くときには、この部分まで切り込んでお手伝いさせて頂きます。

ツールや知識によって活路が拓けるものであっても、実際に活動に落とし込まれて成果を生み出す中で勝ちぐせを人材が身につけて行かなければ、継続した成果を生み出せなくなってしまいます。


人を伸ばすリーダーと、人をダメにするリーダー。

誤解して頂きたくないことは、人をダメにするリーダーがダメな人材ではありません。

人を伸ばすことやリーダーとしての役割を知らない中で、もがいているかもしれません。

リーダーを育てていくのも、更にその上のリーダーの役割になります。

仕組みや指導の仕方を教えられていないという視点が大切です。