第67話『廃業寸前のホテルが生み出した顧客体験価値』
先日、廃業寸前だった田舎のホテルが、面白い取組みで外国人観光客を集客しているという番組がありました。
やっていることは、誰もが思い浮かぶアイデアばかりですが、それを形にして高めるというのは、誰もがやれないレベルだと感じました。
廃業寸前だったということもあるかもしれませんが、効果や効率を考えたらやれないようなことばかりです。
新しい価値を生み出すには、効果や効率を土台にした思考ではやれないこともあります。
やっていることは、
綺麗な可愛い浴衣を着て、餅つき大会をしたり、お寿司を職人さんと一緒に握ったり、羽根つきをしたり・・・・
外国人のお客様のリクエストを何でも取り入れていったということでした。
日本で、日本の文化を体験するという価値を提供しています。
そして、年間1000人以上の外国人のお客様が、これらを体験しに宿泊をしている。
体験型のイベントというのは、特別な新しい取組みではありません。
しかし、そのような手法を『どのような価値ある体験』として形にしていくかで、田舎の宿泊施設(ホテル)という過去の存在意義から、大きく脱却していきます。
外国人のお客様からしてみれば、そのホテルの存在意義は宿泊することではないのは明白です。
日本文化を体験できるという価値が、そのホテルに対する存在意義です。
ホテルの方々は、さまざまな苦労と葛藤の中から活路を拓いたと思います。
新たな取組みというのは、どのような結果を生むか分からないから、組織の中に批判も生まれます。
それでも、皆で協力してやるには根本的な求心力を生む『何か』が必要です。
これは新たな存在意義を生み出す時に必ず必要になるもの。
それは、『お客様にどのような体験をして頂き、どのような価値を感じて喜んでいただくか』を明確にしたコンセプトです。
どうなるかは分からないが、これらの取組みで外国からのお客様に喜んで帰ってもらおう!というものが組織の求心力になったのではないかと思います。
私が『顧客体験価値』創造戦略のお手伝いをするときも、必ずこれを明確にしていきます。
難しく表現しましたが、これが『何の為に』という目的になります。
ただ、この目的というのは間違いやすいものです。
お客様がどのような価値ある体験をするかが目的であればいいのですが、明確になっていないと利益を目的と考える人もいます。
利益は企業経営の手段として重要ですが、利益が目的の人は効果や効率思考になってしまい、新しい価値を生み出す思考の出発点とは違います。
新しい価値を生み出すときには、同時に採算性も考える必要もありますが、小さなリスクを取る覚悟が無ければ結局は無難なものしか生み出せなくなります。
番組を見ていて、さまざまな顧客体験価値を提供するアイデアが出てきました。
ホテルであれば、さまざまな利用目的のお客様がいると思いますが、どんな体験ができる旅を提供するか?という旅のサポート。
お客様の宿泊でどのような価値あるエピソードを提供するのか。
可愛い浴衣が選べるだけでも、女性や子供は嬉しいかもしれませんね。