第66話『存在意義の無い差別化では意味が無い』



「接客を良くして、サポート体制を充実させ、あれこれ面白い仕掛けなどを実施する準備をして差別化を考えていますが、どう思われますか?」

「いろいろ挑戦するのは良いことですが・・・・、それらによってどんな価値を差別化したいのですか?」

「う~ん・・・すみません、質問の意味が分からないのですが」

「それらの取組みによって、お客様はどのような価値ある体験が出来るとお考えですか?」

「え~と・・・良い体験ができると思うのですが・・・」


お客様にどのような価値を提供するのかという目標が無ければ、『何をやるか』は明確になりません。

接客一つとっても、相手にどんな体験価値を提供するかで、丁寧なものにもフランクなものにも変化します。


地域の差別化や顧客の差別化を考えるときに、競合他社が入り込んでいないニッチを狙ったりします。

競合が入り込んでいないということは、お客様には届いていないので、自社がそこに参入すればお客様にとっては価値ある存在になります。

他社が入り込むまでは、お客様にとって自社しか存在しないので差別化になります。

この場合、その商品やサービスを自社しか提供していないという存在意義が生まれますが、これはお客様にとっての何かしらの価値があるからです。


この『何かしらの価値』というのが、企業の存在意義です。

言い換えれば、お客様にとっての価値が、企業の存在意義になります。

これが明確でないときに差別化を考えると、お金を頂いている商品やサービスの価値ではなく、周辺の接客やサポート体制などをアンケート調査からと言って改善していきます。

これはこれで大切ですが、接客やサポート体制というのは『存在意義』を支えるものです。

事業の中心になっているものは、商品やサービスを活用してお客様がどのような価値ある体験が出来るかです。

それを実現するために、周辺の接客やサポートなどがあり、これは価値ある体験によってやり方が変わります。

組織体制も、提供するものによって変わります。


お手伝いさせて頂いている業種はサービス業が多いのですが、事業本来の価値を見失っているのでは?というところが出発点です。


床屋さんは低価格競争によって安くなりましたが、事業の価値が『安く髪を切る』というところから脱却できなければ、お客様にそれ以上の価値ある体験は提供できません。

お手伝いした床屋さんでは、デザインカットの技術を活かして、美容室に行っていた男性顧客を呼び戻しています。

お客様に美容室よりも低価格で、カッコいい髪型という価値ある体験を提供しています。

そのお店の料金では高額の方ですが、美容室に比べれば半分以下の価格です。

髪をカットすることで、お客様はどんな価値ある体験を手に入れられるか?


これが事業の存在意義であり価値ですが、これを無視して接客やサービスを良くしても本末転倒です。

何度も言いますが、接客やサービス・サポートは必要です。

ただ、これらは『価値ある体験』というものを中心にして、それを強化するためにやり方が変わります。


事業でどんなコトを生み出すのか?

お客様にどんな価値ある体験を提供するのか?


成長期や成熟期は、これらをあまり考えなくてもよかった(市場にお客様がいるので)のですが、これからの時代は『事業の存在意義』を再構築していく必要があります。