第63話『価値は体験づくり』



「スーツを通じてお客様が今までに感じたことが無い体験を作ること」

そう話すのは、私も懇意にしている福岡県にあるテイラーの社長です。


私たちにとって、スーツはとても身近なものですが、よくわからないものでもあります。

社会人になって、こちらの社長と出会うまでに何着も市販のスーツを買ってきましたが、お店の人に教わったことなんて微々たるもの。

似合わないものは似合わない!

サイズが合っていない!

この色の方があなたに合います!

歯に衣を着せずにハッキリと伝えてくれます。

(といっても、頑固とかではなく、とても優しくて気さくで親しみが湧く魅力的な方です)


先日お会いした時に、あるエピソードを聞かせてくれました。

「新規のお客様が通勤で使うジャケットが欲しいというので・・・・」

「あれこれ話しているうちに、お互いケンカ腰になって(笑)」


そのお客様が、

お客様 「その色で似合わなかったら絶対にお金払わないからな!」

社長 「似合ったら、倍の金額貰いますよ!」

なかなか激しいやり取りがあったようです。


そのお客様はスーツで来店されたようで、まずサイズがブカブカで合っていないことや、いつも無難な黒やグレーのスーツを勧められるので、そのようなものしか持っていないということでした。

そこで、テイラーの社長が、明るめのレンガ色のジャケットをおすすめしたところ、今まで着たことが無いような色なので、「派手すぎる!」という気持ちと不安が生まれたようです。

生地で見るほど派手ではないということを伝えたようですが、今までの安心するレベルを超えていたようです。

無難なものを選んできた人は、安い買い物ではないのでなおさら抵抗感が生まれたみたいですが。


ジャケットが出来上がり、品渡しして三日後に・・・また来店されたとき。

お客様 「凄く派手な気がして抵抗があったけど、着ていった日に3人に褒められたよ~!!」

社長 「なんて褒められたんですか?」

お客様 「今日は雰囲気が違いますね(良い意味の)とか、何かカッコいいとか・・・(笑)」

社長 「良かったじゃないですか!!」


それから、しばらくしてそのお客様から電話があり、

お客様 「ちょっと暇だったら買い物付き合ってくれよ」

社長 「暇だったらって・・・忙しくないけど暇でもないよ。まあ近くだから今から行きますよ。」

そして行ってみたら、服の見立てをして一緒にショッピング・・・・。


いろいろ面白いエピソードのお話を聞かせて頂きました。


そのお客様は、「お前のところでしかスーツは買わない」とまで言ってくれているようです。


スーツというのは、買う時がお客様にとっての価値ではありません。

そのスーツを着ているときにどのような体験ができるのか。

普段は、つい無難なものを買いがちですが、お客様の日常にちょっとした嬉しい体験や、挑戦する気持ちという一歩を踏み出す勇気の後押しをすることも、『顧客体験価値』を高めることになります。

ビジネスにおいて、お客様視点というのは当たり前の言葉になっていますが、実際の取組みがそうなっているかは疑問です。

自社が扱っている商品やサービスによって、どんな価値ある体験をお客様に生み出しているか?

モノとコトに分けて考える風潮がありますが、どんなビジネスも結局のところ『お客様にどのような価値ある体験を提供するか』ということにつながります。

先人が“事業”と名前を付けた意味を考えても、事(コト)を業(なすべきこと)するもので、事業の存在意義というのは、お客様にとって価値あるコトを生み出すというものになります。

事業の中で、業種や業界など多種多様に分れますが、お客様にとって価値ある体験を高いレベルで提供することが、企業の魅力づくりであり差別化になっていくということを、改めてこちらの社長のお話から実感しました。

こちらの事例は、ホームページの『コト生み事例』にも掲載しております。

(ご紹介した福岡県にあるテイラーさんを紹介してほしいという方がいましたら、お気軽に当社へご連絡下さい。東京のお客様も沢山いらっしゃいます。)